札響のコンミス・大平まゆみさん。難病を公表したその後【ALS】(ピアノが弾けなくなった過去話)
こんにちは!小さなピアニスト・ピアノ講師のばんです*
今回は、2019年に難病を公表し札響を退団した、ヴァイオリニスト・大平まゆみさんの特番を見た感想を書きます。
「もし自分が楽器を一生演奏することができなくなったら?」
そう考えさせられた1時間。自分が1度経験した、演奏を続けられないかもしれない危機を思い出しました。
そして、”音楽の力”を信じる大平まゆみさんの姿が印象に残っています。
現在新型コロナウイルスの影響により、緊急事態宣言が発令されたばかりですが、音楽家が今できることは何か、考えたいと思います。
札響のコンミスを21年間務めたヴァイオリニストが難病に。
2019年11月20日、札響のコンミスが退団するという突然の知らせに驚いたのを、今でも覚えています。
退団の理由は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症したためでした。あまりにも唐突で、衝撃的。なぜ、この人が…。
それから数ヶ月たち、放送された「NNNドキュメント 私の声はバイオリン」。去年の衝撃を思い出しながら、退団に至るまで、そしてその後を観ました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、国に指定された難病の一つです。難病情報センターによる解説は以下の通り。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。その一方で、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/52
大平さんは、声が出しにくいことに気がつき、病院を転々としてやっとALSであることがわかったようです。
筋肉が衰えていく病気、と言われてすぐ思いついたドラマ、『1リットルの涙』。これは”脊髄小脳変性症”という病気で、また違うようです。知恵袋に大変わかりやすい解説が載っていました。 参考https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12119868307
音楽の力を届け続ける活動をしてきた。
大平さんは、史奈ちゃんという”脊髄小脳変性症”を患った女の子に長年音楽を届け続けていました。ビデオを届けたり、時には札幌から遠い稚内まで演奏しに通ったり。史奈ちゃんの容態が悪化した時も、史奈ちゃんは大平さんの演奏を聴いていて、その後回復したそうです。
高齢者施設や病院への訪問演奏も積極的に行なっており、大平さんは『音楽の力』肌で感じてきました。
音楽の力を届け続けてきた大平さん自身が、難病になってしまうというあまりにも辛い現実。『まさか自分が。』この一言に尽きます。
楽器が弾けなくなるかもしれない
楽器を演奏する身にとっては、病気になったことはもちろんですが、
『楽器が弾けなくなる』
ことに対する恐怖・悲しみ・辛さは計り知れないものだと思います。しかも筋力が落ちてくるのであれば、楽器が弾きにくくなっていくのが目に見えてわかる。弦を押さえたり弓を動かすことはおろか、調弦まで難しくなってしまった大平さんの気持ちを考えると、本当に辛かったです。
自分も経験した、「弾けなくなるかもしれない」恐怖。
実は、私も「楽器が弾けなくなるかもしれない」ことに直面した経験があります。それは、突発性難聴になった時。
突発性難聴になった経験
1度目は高校1年生の秋頃、ちょうどフジ子・ヘミングの本を読んでいた時でした。部活の最中、なんだか自分の声が変に聞こえる。耳に水が入った時や、あくびをしている時もような、何か詰まった感じで、自分の声が大きく聞こえる。周りの音は普通に聞こえます。すぐに病院に行けず、耳が聞こえにくくなったフジ子・ヘミングを思い出し、次の日急いで病院に行きました。
原因は急性低音障害型感音難聴。 参考https://snabi.jp/article/138
その名の通り、低い音が聞こえにくい状態になっていました。ちなみに難聴も難病の一つ。私は超早期に気がついたため、点滴と薬による治療で済むと伝えられました。しかし、耳に負担のかかるピアノを弾くことは禁止。その力を入れていたコンクールを控えていました。
ピアノが弾けないという初めてのことに、自然と涙が。あんなに練習は嫌だったのに、いざピアノを弾くことができない状況になると、生活の一部を奪われた感覚。どうしたら良いのかわからないかったです。
幸いにも1週間の療養で完治しましたが、その後練習を聴いていた母曰く、低音が聴きにくかったためか、低音(左手)を大きく弾いてしまっていたようです。
恐怖と戦う力の源は”音楽の力”
大平さんが「楽器が弾けなくなる恐怖」と戦うための源は、”音楽の力”。
プロとして、この状態で良いのかと悩む姿もありました。しかしながら、調弦が難しくなっても、以前のように弾けなくても、”音楽の力”を信じ続けて闘病しながら演奏活動を続ける大平さん。
昨日、ついに日本にも緊急事態宣言が発令されました。世界中がかつてない深刻な状況に陥っています。今、音楽家に出来ることはなんなのか。”音楽の力”を信じて、この状況を乗り越えたいです。